3.撮影ノウハウ


ここでは、テーブルフォトの撮影に関して私の工夫したこと、試みたことをご紹介します。 私の経験では、テーブルフォトで培ったテクニックというのは、風景やポートレイトを撮影する際にもたいへん役立ちます。 あれこれ考えながら、とことんこだわってテーブルフォトを完成させるというのは、写真を学ぶにはもってこいの方法だと思います。



3−1.ライティング


写真の光源としては、日光、ストロボ光、電燈の光など様々な光があります。 日光は何といっても一番見慣れた光源ですし、最も自然な感じの写真を撮ることができます。 ただ、自由自在に操るというわけにはいきません。 ストロボは、小型で複数個を使用しても場所をとらない、光量の調節・照射位置の設定などの点で扱いやすいという利点がありますが、実際に写してみないと光の状態が確認できないのが難点です。 電燈はその点、被写体への光の当たり具合を実際に目で見ながら作業ができます。 一方、光量の調節などを行えるようにしようと思うと、コストと手間がかかります。


光の質を変える − ディフューズ・バウンス

ストロボを直接(ダイレクト)光として使った場合と、様々なディフューザー(光を透過させて拡散する物)・バウンサー(光を反射して拡散する物)を用いて間接光として使った場合の表現の違いをみてみます。


 3-1-1

画像 3-1-1は、ストロボ光を被写体にダイレクト照射した場合です。 明部と暗部のコントラストが強く、被写体の影の形もくっきりと出ています。


 3-1-2

画像 3-1-2では、インスタント焼きそば(お湯を入れて3分という、あれです)の発泡スチロール製空き容器(約17cm四方)をストロボから少し離してセットし、ディフューザーとして使いました。 ディフューザーは被写体に対して十分な大きさがあればよく、インスタント焼きそばの空き容器程度のものでも、高さ10cmにも満たないこの被写体にはかなり効果があります。


 3-1-3

写真用機材の銀色アンブレラ(反射傘)を使ったのが画像 3-1-3です。 光は拡散されながらも芯を残している感じで、メリハリのある表現になっています。


 3-1-4

同じバウンサーでも白色レフ板を用いると、雰囲気はずいぶん違ってきます(画像 3-1-4)。 光が全体によく回り、影はうっすらとしか見えません。 メリハリはあまり感じません。


多灯ライティング

一つのストロボだけでは、なかなか思い通りのライティングはできませんので、複数個のストロボを、照射位置・光量・光質を変えて発光させて、思い描いている光の状態を作り出すようにします。


 3-1-5

画像 3-1-5は、被写体の立体感は出しながらも全体によく光を回し、明るい雰囲気の写真にしようと意図したものです。 メインライトは上の画像 2-2-3と同じで、正面から左へ45度、上方へ45度の位置から銀のアンブレラでバウンスしたストロボ光を照射しています。 これに、上方やや後ろよりの位置から白レフ板でバウンスしたストロボ光を補助光として弱めに当て、背景の明るさを増すと同時に被写体が落とす影を弱めました。


多灯ライティングの場合、まずメインとなる光を決めて、それで足りない部分を補助光で補うようにするのが良いと思います。 むやみに複数のストロボで照射したのでは、とても不自然なライティングになってしまいます。 ストロボを3灯以上を同時に使う場合、どのストロボをどのように調節したらいいのか分かりにくいこともあります。 そのようなときは、それぞれのストロボを個別に発光させて撮影し、モニターでその効果を確認しながら調節するようにしています。


いろいろなライティング

改めて言うまでもないことですが、光の状態というのは写真にとって決定的な要素です。 場合によっては、被写体が何かということよりも、ライティング次第で写真から受ける印象が決定されることもあると思います。 下は様々にライティングを変えて撮影してみた例です。


 3-1-6

画像 3-1-6は、ストロボ1灯をダイレクト照射して撮影しています。 太陽の下で撮ったような雰囲気になります。 くっきりと表れる影の処理が工夫のしどころです。 ここでは、貝を白い石の上にのせて、白い石をレフ代わりに使い、貝の影になる部分が黒くつぶれてしまわないようにしてみました。


 3-1-7

画像 3-1-7では、被写体の上部・左右前方からディフューズした電燈の光をまんべんなく当てています。 光が全体によく回ってハイキーな調子になっています。 ファッション・フォトのような明るい印象ですが、やはり影の部分がないというのは現実感に乏しいような感じがします。


 3-1-8

画像 3-1-8では、画面右側からの電燈の光をメインライトとしています。 左後方と正面よりレフ板を使って影の部分を起しています。 サイドライトによりドラマチックな印象になりました。 また、被写体の質感が際立った描写となりました。


 3-1-9

画像 3-1-9は、スーパーのお惣菜が入っていた透明のプラスチック製容器を台座にし、その下から電燈光を照射したものです。 被写体の顔が黒くつぶれてしまわないように、上方からも弱く光を弱く当てています。 こんなライティングは、テーブルフォトならではでしょう。 幻想的な感じを受けます。


この、下からのライティングを応用して、影に色をつけることができます。


 3-1-10

画像 3-1-10では、被写体は白いアクリル板の上に載せています。 そのアクリル板の下から、赤い照明を弱めにあて、左上方から蛍光灯色の照明を強めにあてています。 アクリル板は、上方からの照明で照らされている部分は白く見えますが、被写体の影になって上方からの光が遮られる部分では下からの照明の赤い色が透けて見えます。


余計な光をカットする

被写体には、表現意図に即した適切な光だけが当たっているべきであって、それ以外の余計な光が入り込んでいる場合にはカットします。


 3-1-11

画像 3-1-11では、被写体のフィギュアに対してほぼ正面からメインライトをディフューズして当て、さらに後方上部からアクセントライトとして1灯をダイレクト照射しています。 アクセントライトは、被写体を背景から際立たせることと、被写体の滑りのある質感を表現する意図で使ったのですが、しかしこの例では、アクセントライトが被写体の前側にも回ってしまい、フィギュアの両肩・両腕の黒が締まりのないものとなってしまいました。 そこで、黒い画用紙を遮光板として被写体の上部にセットし、被写体の前側に回り込むアクセントライトをカットしたのが下の画像 3-1-12です(フィギュアの足元の影を比べてみると、どの位置に遮光板を使っているのかが分かります)。


 3-1-12

遮光板の効果は一目瞭然だと思います。 風景写真やポートレート写真などでは光を一部カットするといっても大変な作業になってしまいますが、テーブルフォトでは画用紙一枚あればできることなので、積極的に活用したいテクニックです。


光を演出する

テーブルフォトであれば、光を様々に演出して楽しむこともできます。


 3-1-13

画像 3-1-13では、上方と左右の3箇所からストロボを照射していますが、上方のストロボには黄色のセロファンを、左右のストロボにはそれぞれ赤と緑のセロファンを被せています。


電燈にも、色温度の低い電球色のものから色温度の高い蛍光灯色のものまでいろいろなタイプがあるので、いくつか取り揃えておくとバラエティに富んだ表現ができると思います。


 3-1-14

画像 3-1-14は、被写体の左前方から蛍光灯色のランプのみで照らしています。 この状態でホワイトバランスを設定し、これに加えて電球色のランプで右後方より照射したのが下の画像 3-1-15です。


 3-1-15

ホオズキを暖かく柔らか味にある色にしたかったので、このようなライティングにしてみました。






前ページ | ホーム | このページのトップ | 次ページ
inserted by FC2 system