3−3−2.光の工夫


窓際での撮影

窓際に被写体を置き、窓から差し込む陽の光で撮影してみました(画像 3-2-8)。


 3-3-8

コントラストが強すぎ、見苦しい影がくっきりと出てしまいました。 窓にレースのカーテンを引いて、光を拡散してみます(画像 3-3-9)。


 3-3-9

光はやや柔らかくなったものの、カーテンのひだの影が写り込んでしまい失敗でした。 そこで、ゴミ出し用の乳白色半透明のポリ袋を二つ折りにして被写体の前に掲げてみました(画像 3-3-10)。 両手で袋を持たなければならないのでカメラのシャッターはセルフタイマーで切ります。 もしくは、ゴミ袋を窓に貼るという方法もあります。 こちらの方が、実際に光線の具合を確認しながら撮影ができます。


 3-3-10

結果はなかなか良好で、柔らかい光がよく回って見苦しい影は消えています。 また、このようなやり方で光を拡散させると色調も暖かみを増す(青っぽさが減少し、赤みが増す)ので、夕方近くの陽の光で撮影したような写真になりました。 ここでは花を被写体にして撮っていますが、ポートレート撮影のなどの折にこのテクニックを使ってみても、雰囲気のある写真が撮れるのではないでしょうか。


なお、このように直線的な硬い光を拡散して柔らかな光に変える方法をディフューズといいます。 ディフューズされた光は影の部分にも回り込み、陰影を弱めます。 光を透過させるディフューザーには、一般にはトレシングペーパーや白い布などが用いられています。


ストロボ光での撮影

コンパクトカメラに内臓されたストロボを使って撮影したのが下の写真です(画像 3-3-11)。


 3-3-11

真正面から照射されたストロボ光はベタな感じで、立体感もありません。 また、接写になるとストロボ光量のオート調整が難しくなり、ここでもやや強すぎになってしまったようです。 ワンランク上の写真を撮ろうとするなら、単体のストロボを用意して、照射位置や光量の調整に工夫を凝らした方が良いと思います。


 3-3-12

上の画像 3-3-12のような機材を揃えてみました。小型ストロボ、三脚、ストロボを三脚にセットするためのアクセサリー(シンクロコード付き)、そしてコードでぶら下がっているのは、スレーブユニットです。 これは、別のストロボ光に反応して作動し、接続されているストロボを発光させる機器です。 これによって、コンパクトカメラ内臓のストロボを弱く発光させることで、こちらの単体ストロボを同調して発光させることができます。


単体ストロボの発光量の調節は、外光式オート(外部自動調光)ストロボであるならばストロボ任せにすることもできますが、接写の場合にはオート調光に誤差が生じることもあり、ここではマニュアルで設定しました(このため、ストロボはマニュアルで発光量の切り替えができるタイプのものが便利です)。 ストロボの光の強さを調整するには、ストロボのガイドナンバー(GN)を基に、カメラの絞り値と、ストロボ発光部と被写体間の距離を変えることで行います。 GNと絞り値、距離の関係は、「GN=絞り値(F)×距離(m)」という式で表されます(ただし、撮影距離が1m未満になるような場合には、この式が成り立たなくなります)。 つまり、GN16のストロボならば、絞り値F8.0で撮影するときは、16÷8=2で、ストロボと被写体を2メートル離せば適正な明るさになることになります。 なお、ISO100でGN16のストロボは、ISO400ではGNは32になります。 また、ストロボの発光量を1/4にすると、GNは1/2になります。


単体ストロボを被写体の左側斜め前方にセッティングし、コンパクトカメラのストロボをマニュアルで発光量を最小に設定(ストロボにプリ発光機能が備わっている場合には、それも解除)して撮影してみました(画像 3-3-13)。


 3-3-13

コンパクトカメラに内臓されたストロボだけを使って撮影したのとは違い立体感は出ましたが、これでは陰影が強すぎます。 被写体の右側に銀のレフ板(厚紙にアルミホイルを貼ったようなものでも代用可)を置きストロボ光を反射させて影の部分を起してみます(画像 3-3-14)。


 3-3-14

陰影は大分弱まりましたが、まだ光が硬い感じなので、乳白色半透明のゴミ出し用ポリ袋を二つ折りにしてストロボの前面に掲げて、ストロボ光をディフューズしてみました(画像 3-3-15)。


ディフューザーはストロボから30センチ程度以上離し、かつ被写体に対して十分な大きさがないと、あまり効果がありません。 また、ディフューザーを用いると光が弱められるので、その都度撮影結果を見ながらストロボの発光量、照射距離、カメラの絞り値などを調整することが必要です(ディフューザーを使う場合には、ストロボのオート機能は利用できません)。


 3-3-15

拡散された柔らかい光が全体に回って、良い感じになりました。 また、やはり光の青の成分が若干吸収されています。 袋を二つ折りではなく、四つ折にしてみたのが下の写真(画像 3-3-16)です。


 3-3-16

光はさらに柔らかくなり、色調もいっそう暖かみを増し、ストロボ光で撮ったとは思えない仕上がりになりました。 カメラ内臓のストロボを直射して撮った写真(画像 3-3-11)と比べてみるとその差が分かります。


最近ではスレーブ機能を内蔵した単体ストロボも販売されており、このような撮影も簡単にできるようになってきています。


電燈での撮影

下の画像 3-3-17は、造花の紅バラを天井の蛍光灯の光のみで撮影したものです。


 3-3-17

花の中心部には光がまわらずに暗くなっています。 また、下の方の花びらは影になってしまっています。 シャッタースピードをマニュアルで変更できるカメラであれば、手持ちの電燈ひとつで影を出ないようにして撮影することができます。 シャッタースピードを数秒と遅くして、シャッターが開いている間に手持ちの電燈を被写体のまわりで回し、まんべんなく光を当ててやれば良いのです(このとき、電燈の光が画面に映りこんでしまわないように注意します)。


 3-3-18

画像 3-3-18では、シャッタースピードを5秒にセットし、シャッターが開いている5秒の間、蛍光灯型電球を花の周りでぐるぐる回し続けました。 シャッタースピード、電燈と被写体との距離やISO感度、絞り値などを変えて画像の明るさを調節しますが、このあたりは勘と経験がものをいうところです。


その他

長い期間咲き続けて、よい被写体になってくれていたサイネリアの花も、だんだんと色褪せてきてしまいました。 そこで、文字通りもう一花咲かせてやろうと思い、単体ストロボにブルーのセロファンを被せて照射し撮影しました。 光がよく当たる部分は鮮やかな青色になる一方、影の部分には元の花の色が残り、面白い表現となりました(画像 3-3-19)。


 3-3-19

上の画像 3-3-12で紹介したスレーブユニットは、カメラより後方に置くなどしてカメラのストロボの光が届かなくなった場合には機能しません。 そこで、スレーブユニットを延長シンクロコードを使ってカメラのストロボのそばにセットしてしまうというのも良い方法です(画像 3-3-20)。


 3-3-20

こうすれば、確実にカメラのストロボと単体ストロボを同調させることができます。






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